一般的な思春期の発達過程

2021年10月10日

 思春期の発達過程は、自らへの二つの問いにより、始まります。「私は誰?」「私はどこへいこうとしているのか?」。その問いに、通常でも、10年近い歳月をかけてある程度の答えを探していく旅なのです。親や周囲の大人の期待に過剰に応えることをやめることから、その問いは始まります。親の期待を脱ぎ捨てて、自分が自分に現実的な期待をすることに着替えていくプロセスといってもいいでしょう。親はそのプロセスで、しばしば、子どもに、失望し、困惑し、消耗し、腹が立ちます。あるいは取っ組み合いになります。それは、子どもが自らの問いに答えて行こうとするときの、つまり、なにか新しい命が生まれようとするときの、陣痛のようなものともいえるでしょう。それは、非常に大切で意味のあるプロセスなのです。

 思春期の発達課題は、大づかみにいうと、「私は誰?」「私はどこへ行こうとしているのか?」という問いに、自ら、体を張って、試行錯誤しながら答えていくプロセスであり、思春期を「卒業」しても、基本的には生涯終わることのない問いです。思春期までは、親が期待する「私」でいればよかったのですが、思春期に入れば、「私」が期待する「私」になる過程であり、また同時に「私」が期待していたけどそうはなれない「私」も引き受けていかなければならない過程なのです。後者が大きければ、それだけ、思春期の混乱は大きくなりますが、大なり小なり、人生の全体の中では、誰もが直面しなければならない過程です。そして「私」にとっての「私」は、<私はどのような価値があるのか、誰にとっての価値なのか>ということです。自尊心といってもいいし、自己価値観とっていいでしょう。思春期でつまづく子どもたちは、ほとんど、自尊心が傷ついており、低い自己価値観に悩んでいることが多いのです。

次回は、「①前思春期の発達課題」「②思春期前期」