月別アーカイブ: 2021年11月

思春期のつまずき ④幼児ー母親の再接近期のジレンマ

 思春期は、前に進むことと、後ろに戻りたいことの、二つの折り合いのつかなさに、どう折り合いをつけていくかということであり、「自立」と「依存」の折り合いのつかなさをめぐる嵐のような葛藤であるといっても良いでしょう。幼児の一時期に、この思春期の折り合いのつかなさの葛藤と良く似た、時期が、1才半くらいから3才くらいまでの間で、母子の間でしばしば生じます。これが、「再接近期」と言います。   マーラーというアメリカの子どもを見ていた女性精神分析家が、「再接近期」という幼児の心の発達の一時期を名づけています。その意味は、幼児が、歩行ができるようになると、喜び勇んで、母親の元を離れて、一人で世界を探索し、木の葉や石などの「宝物」を見つけて、意気揚々と母親の元に返ってくるという時期があり、その次に、1歳半くらいから3歳くらいまでの時期に、母親から離れて一人で自由に探索にいくのは、さびしい、でも母親に近づ… 続きを読む »

思春期のつまずき ③赤ん坊ー母親のコミュニケーション

③赤ん坊―母親のコミュニケーション  思春期の子どもに対する親の対応も、基本的には、泣き止まない赤ん坊を抱いてあやすのと同じことです。赤ん坊は、不快や苦痛の体験を泣くことを通じて、それらを母親に投げ込み、母親がそれを母親自身の心の中で「解毒」し、安心かつ安全な体験として、赤ん坊に差し返すのです。いわば心理的、情緒的な授乳です。思春期ではこの、「泣き止まない」「むずがる」が、「悪態をつく」「身体化する」「衝動的な行動に出る」「非行をする」という表現に変わります。  生まれたばかりの赤ん坊は、人生の最初の半年は、母乳か人工ミルクかどちらかにせよ、白く甘い栄養のある液体だけを口にして大きくなります。しかし、それは、物理的な栄養が口にはいるだけではないのです。実際、人工ミルクの哺乳瓶を口にさしているだけでは、子どもの身体の発育はしだいに低下していきます。つまり、口のなかに入るのは、ミルクの物理的な… 続きを読む »

思春期のつまずき ①つまずきの積極的な意味 ②思春期以前の課題への立ち返り 

 思春期のつまずきは、多くは、思春期前期に生じます。中学2年頃から、学校での体験でなにかに修復できないくらい傷ついて、不登校になることが多いように思います。そうすると思春期前期の発達課題がクリアされることが、不登校の解決につながるということです。そして、上記した、思春期中期以降は、ある意味では、その後、本人1人で取り組んでいいくことが基本的にはより可能になります。思春期前期に発達課題でつまずいているということは、それまでの発達課題がクリアされていないということを意味します。しかし、ここで大事なことは、こういうことを言うと、多くの母親が「私の子育てが失敗だった。は母親として失格だ」と自責的になられます。私がお母さん方をみてきて、多くのお母さん方は、ほぼ、母親としては合格点以上なのです。子どもの側の素因による育てにくさ、環境要因による負荷などがあり、親としては合格点以上でも、思春期で子どもがつ… 続きを読む »

一般的な思春期の発達過程 ③思春期中期 ④思春期後期の発達課題

③思春期中期の発達課題 「私は誰」の答えを、自分の心に求めていこうとする時期。異性との交流が始まり、また、進路を巡る葛藤や、家から物理的に離れることをめぐる葛藤、つまり「私はどこへいこうとしているのか」という問いへ現実的に答えていく課題に直面します。  高校生になると、中学生の自分の、外見や身体的なところで体験されがちな「私」の個性が、もっと精神的な「私」の個性として体験されるようになります。いわば、それまで、行動や身体を通じて表現してきたものを、言葉で、「私」を表現できるようになります。 それとともに、異性との付き合いも始まり、「性」が単に身体的なものから、「人」との情緒的なつながりであることを経験し始めます。それはまた、男の子が、男性性を取り入れ、女の子が女性性を取り入れることができてはじめて、異性を受け入れる準備ができるのです。そして、また、大学進学を目前にして、進路をめぐって、また… 続きを読む »