大人の発達障害について(3)ADHDと感情障害

2022年7月20日

 大人のADHDの方も、最近は受診されることが多くなりました。思春期以降になると、小学生まで顕著であった多動・衝動性は背景化します。そのために、昔はADHDは大人になるまでによくなることが多いと言われていました。しかし、多動・衝動性は目立たなくなるものの、内的なソワソワ感は成人になっても持続しますし、不注意も持続することが多いです。そして女性に目立つように感じますが、感情の細かい浮き沈み、感情の制御困難などは、むしろ、主たる症状として持続する場合が多いように思われます。

 大人の発達障害と感情障害の合併は、ASDであれば慢性抑うつ(気分変調症、持続性の軽度のうつ病)を合併しやすく、ADHDの場合は、双極Ⅱ型障害の合併が比較的多いように言われています。しかし、後者の場合、双極Ⅱ型より明らかにもっとサイクルが短いですし、その日のうちでも、気分の上がり下がりが多く、むしろ子どもの頃から持続する慢性の強いイライラ状態を中核症状とするDMDD(破綻性気分調節障害)の方がメインではないかと思われますし、ADHDとの近縁性も指摘されています。

 この状態は、いわゆる「ヒステリック」と表現される状態とも重なるものがあると思われますが、ADHD本体の問題よりも、DMDDによって、家庭内において夫婦関係に支障をきたし、子どもとの間も悪循環となるケースも少なくありません。メチルフェニデート(コンサータ)などを用いると、こうした慢性のイライラに基づく感情爆発がなくなり、家族との関係性も良好になることが多いです。ただし、別の問題が起きることもあります。例えば日常的にイライラと感情爆発が起きていた40代の方が、薬物療法によってその人のパーソナリティの一部と思われていた特性がストンと平坦化しました。そうすると、それまでのその人とは別人のようになってしまい、本人も周囲もその変化に困惑するといったことがありました。そして、子どもから「そんなの母ちゃんじゃない。気持ち悪い」と言われて、薬をやめた方もいらっしゃいました。