思春期のつまずき ①つまずきの積極的な意味 ②思春期以前の課題への立ち返り 

2021年11月4日

 思春期のつまずきは、多くは、思春期前期に生じます。中学2年頃から、学校での体験でなにかに修復できないくらい傷ついて、不登校になることが多いように思います。そうすると思春期前期の発達課題がクリアされることが、不登校の解決につながるということです。そして、上記した、思春期中期以降は、ある意味では、その後、本人1人で取り組んでいいくことが基本的にはより可能になります。思春期前期に発達課題でつまずいているということは、それまでの発達課題がクリアされていないということを意味します。しかし、ここで大事なことは、こういうことを言うと、多くの母親が「私の子育てが失敗だった。は母親として失格だ」と自責的になられます。私がお母さん方をみてきて、多くのお母さん方は、ほぼ、母親としては合格点以上なのです。子どもの側の素因による育てにくさ、環境要因による負荷などがあり、親としては合格点以上でも、思春期で子どもがつまずいてしあうことはよくあることです。

①つまずきの積極的な意味

  思春期のつまうきは、決して病理的なものだけではありません。必ず、新しい命が生まれ成長しようとするプロセスが背景に動いていることを忘れてはなりません。

 親の期待から自分の期待に脱ぎ変えていくプロセスの、必然的な発熱という意味があります。

 それまでの良い子が、不登校になったり、暴れたりすると、「問題行動」が出てきた、「心の病気」が出てきた、さて、早期に解決しなければと普通は親は思います。しかし、「問題」「病気」という見方は、親にとって都合が悪いという視点からのレッテル貼りであるという側面を忘れてはなりません。無論、暴力、不登校等を放置してよいというのではありません、「解決」に向けてなんらかの具体的な動きが必要です。しかしながら、一見、ネガティブな表現の背後に、ポジティブな動きが胎動していることを忘れてはなりません。たとえば、風邪を引いたとき発熱します。昔は、発熱すると、すぐに、解熱剤を飲ませていたものですが、発熱しているというのは、症状でもありますが、本質的には、外から侵入してきたウィルスや細菌に対して、体に備わっている免疫システムが作動して戦っているゆえの発熱なのです。健康な力が機能している証拠なのです。ただ、あまりに高すぎる発熱は、解熱剤を使います。高熱による脱水や消耗による害が懸念されるからです。

 思春期のさまざまな、親が失望し、困惑し、はらはらするような、「問題行動」も、実は、思春期の「発熱」という側面があります。すなわち、つまずきには、「本当の自分探し」が始まっているという、成長へ向けた積極的な意味があることを忘れてはなりません。

②思春期以前の課題への立ち返り

 思春期でつまずくと、多くの場合、それまでの発達課題の中でクリアしていないところまで、赤ん坊がえりします。そして、幼児的な依存欲求を向けてきますが、それが可愛らしい赤ん坊のような「直球」ではなく、えぐい「変化球」であることがほとんどです。

 母親と子どもの基本的信頼関係が、心の健康な発達のベースです。思春期でつまずくと、身体は大きくても、ある部分、心は赤ん坊に立ち返ります。そして、母親を求めます。ここで、母親との安心できるつながりを体で実感できないと、母親から離れることができません。自立の方向にいくことはできません。しかし、心は赤ん坊的に立ち返っても、赤ん坊のように可愛らしくストレートに依存してくるということはあまりありません。求め方がしばしばえぐい「変化球」であることが多いのです。親の期待を裏切るということで、「依存」し、身体化することで、「依存」し、自分の身体を傷つけることで「依存」し、暴力を振るったり、非行したりすることで「依存」してくるのです。そうやって、母親との安心感のあるつながりを求めているのです。