一般的な思春期の発達過程 ①前思春期 ②思春期前期

2021年10月15日

①前思春期の発達課題

 10才から12才、つまり、小学校の5年6年あたりの時期を前思春期と言います。この時期は、心はまだ親の掌にあり、しかし、体は親から離れた存在に急速になり始めます。 

 前思春期は、いまだ、第二次性徴(声変わりとか、陰毛が生えるとか)が始まらないけれど、嵐の前の予感というところです。大人びた、批判的な言動をしたり、言葉が汚くなったり、いわゆる「自我」が少しずつ目覚めてきます。また、身長や体重が急速に増加し、ひょろ長くなり、心と体の成長のアンバランスが始まります。しかし、まだ、子どもは親の「掌の中」にあり、基本的には子どもは親の制御下にあります。一方で、親離れ、自立、社会化といった方向に進んでいく準備が必要であり、他方、まだまだ、親子の物理的な絆を保持しなければなりません。前者は、親や教師のセイフティネット下での、より自分に似た気のあう友達で構成される仲間集団との交流(共通の趣味、競争)が、後者には親とのスキンシップが必要です。

②思春期前期の発達課題

 性的特徴が顕在化し始めます。子どもにとって、自分の身体が「異物」のように気感じられ、外見や身体的特徴や能力にこだわります。「私は誰?」の問いに対する答えを、自分の身体に求める時期です。同時に、様々に身体化を来たし衝動的な暴力行為も出やすい時期です。同世代同性の仲間がいると、この時期の混乱が乗り越えやすくなります。

 しばしば14才頃から、難しくなります。切れやすくなり、暴力が出たり、黙り込んだり、親を回避したり、非行がはじまったり、全く勉強しなくなったりという変化がみられるようになります。この時期には、性的な変化が顕著になります。女性なら初潮、男性なら精通です。性衝動や、激しい依存欲求や、攻撃衝動や、孤立への不安に翻弄され、刹那的、身体的な安心感、物理的な安心感を強く求めます。1人では、それらを抱えることはできません。親や教師は、もはや、以前のようにいつも頼れる対象ではなくなります。そうすると、ここでは、同世代同性の仲間集団を持つことがとても重要になります。自分の様々な側面を共有する、あるいは、自分にないものを持っている、仲間たちとのつきあいにより、この時期の不安が抱えられ、グループに所属することでの身体的、物理的な安心感が得られます。自分でも、どこまで、羽目をはずしていいのか分からないというところがあり、壁にぶつかり自分の輪郭を確認するというところがあるので、周囲の大人が許容できない行動には毅然として限界設定を突きつける必要があります。

次回は、「③思春期中期」「④思春期後期」を予定しています。