思春期のつまずき ④幼児ー母親の再接近期のジレンマ

2021年11月27日

 思春期は、前に進むことと、後ろに戻りたいことの、二つの折り合いのつかなさに、どう折り合いをつけていくかということであり、「自立」と「依存」の折り合いのつかなさをめぐる嵐のような葛藤であるといっても良いでしょう。幼児の一時期に、この思春期の折り合いのつかなさの葛藤と良く似た、時期が、1才半くらいから3才くらいまでの間で、母子の間でしばしば生じます。これが、「再接近期」と言います。

  マーラーというアメリカの子どもを見ていた女性精神分析家が、「再接近期」という幼児の心の発達の一時期を名づけています。その意味は、幼児が、歩行ができるようになると、喜び勇んで、母親の元を離れて、一人で世界を探索し、木の葉や石などの「宝物」を見つけて、意気揚々と母親の元に返ってくるという時期があり、その次に、1歳半くらいから3歳くらいまでの時期に、母親から離れて一人で自由に探索にいくのは、さびしい、でも母親に近づきすぎると母親に飲み込まれて自由ではないという、母親とどう距離をとっていいか分からないと言うジレンマに直面する時期があります。「お母さん、抱っこ」というので、抱っこすれば「降ろせ」という。降ろせばすぐに「抱っこ」という。抱っこすればまた「降ろせ」というので、お母さんはだんだん頭にきて「どうせ言うんねえ、ええかげんにしんさいよ」と一発ビンタでも張りたい気持ちになるのです。つまり、母親から離れてひとり立ちしていく幼児の、離れて自立することと、近づいて依存することの、二つの力の「折り合いのつかなさ」のジレンマが、幼児の離れたり近づいたりの繰り返しという行動を通じて、母母親に投げ込まれて、肩代わりさせられるのです。この時期の、母親と子どもの関係が、しばしば健康な子どもの発達においても思春期で再現されるのです。思春期以前の発達課題がクリアできていなければ、思春期における「再接近期」のジレンマは、子も親も、より顕著になります。

次回は、発達障害 ワンポイントアドバイス(8)家事手伝いと「三色野菜理論」を予定しています