発達障害 ワンポイントアドバイス (8) 家事手伝いと「三色野菜理論」②

2021年12月10日

 さらに、お手伝いは、自分のためにではなくて、皆のためにする行為なので、「大人の部分」を使っていることになります。せっかく、子どもが、洗濯物を畳んでくれたのに、畳み方が気に入らないのでもう一回お母さんがやり直して、「二度手間」だからと、子どもにやらせないということを時々聞きますが、心の発達、成長につながることなので、そこは、じっと忍耐です。ついでに言えば、妙に聞こえるかもしれませんが、「お手伝い」をすると、「堂々と不登校を続けることができる」という感覚になる子どももいます。「堂々と家にいることができる」と、逆説的に学校に行けるということにつながります。つまり、不登校は学校に「身のおき所」がないので、家の中にまず「身のおき所(自己肯定感)」がしっかりできることが必要なのです。ただ、誤解がないようにいうと、自己肯定感としての「身のおき所」は、「お手伝い」の前に、「心の幼児的部分」をしっかりかかえておく、あるいは抱えながらという大前提があることを忘れてはなりません。

 そして、「お手伝い」をすることの発達的な利点は、「気持ちの切り替え」が結果としてできるようになることです。大人でも、じっと同じ場所にいて、同じことをしながら、気持ちを切り替えるということは至難の技です。気持ちを切り替えは、行動の切り替えに引き続いて気がついたら生じているということの方が多いのです。ゲームをしているときの気分や考えと、風呂掃除をしているときの気分や考えは幾らか異なるでしょう。そういう気持ちを切り替えることができる行動の切り替えのチャンネルを二つは一日の中で持っておくことが好ましいと思います。

 そこで、私の「三色野菜理論」です。「一日、三色の野菜を食べましょう」とよく言いますよね。それと同じことで「一日、三色の行動をしましょう」というものです。つまり、「学ぶこと」「遊ぶこと」「働くこと」です。それぞれ、広めにとっておくことがコツです。

 ちなみに、これは、うつ病で休職している成人の人たちにも私が勧めていることです。それぞれの三つの領域で、5から10項目くらいリストを上げます。例えば「働くこと」がお手伝いですね。先程の、風呂掃除、米とぎ、洗濯物の取り入れ、ゴミ出し、ペットボトル潰し、草抜き、自分の部屋の片付け、等々、リストをあげ、一日その中で一つは最低実行するというものです。三色の色違いの行動を一つずつ最低やるということです。

 最後に、お手伝いを、トークンエコノミー、つまり、ポイント制にしたり、単価を設定したり、「報酬」と結びつけるというやり方があります。思春期に入るとなかなか続きませんが、小学校くらいまでであれば、モチベーションをつけるという意味では悪くはないでしょう。しかし、大事なところは、親が子どもにしっかりと感謝の意を伝えることでしょう。