発達障害 ワンポイントアドバイス(3)ADHD特有の「面倒臭がり」について

2021年7月28日

 ADHD(注意欠如多動症)の子どもは、興味のあることに過剰な注意の集中をしますが、興味の持てないことには、極端にやる気を示せないことがしばしばあります。常に興奮する刺激を求めており、刺激が外からなくなって、何もすることがない時の「退屈感」は、死んだほうがマシというくらい大きく、そういう事態を必死になって回避しようとします。それに一旦、テンションが上がると、なかなかそこから降りてきません。気持の切り替えが困難になります。この辺りは、すべて、子どもと親がぶつかり悪循環が始まる要因です。

 別の視点から、「面倒臭がり」を考えると、彼らは「今人間」であり、「先の見通し」や「多様な選択肢」が見えにくいのです。すると、彼らの経験としては、今日やらなくてはいけない事と、3日以内にやればいい事と、1週間以内にやればいい事と、1ヶ月以内にやればいいことが、時間的な奥行きの中に置かれず、スクリーンに投射されて横一列に並んでいるかのように見えて、「すべて今しなくてはいけない」かのように感じられてしまうので、「戦意喪失」するのです。この「今人間」というのは、感覚が過敏なASD(自閉スペクトラム症)の人たちにも共通することです。ADHDとASDは50%くらい合併すると言われているで、「今人間」を「先行きの見通しを持てる人間」に育てて行くことは、発達特性のある子どの支援の中核に置かれるべきでしょう。

 したがって、対策としては、「時間的な見通し」「段取り」を子供と一緒に立てることが望ましいのです。そして、多くの親はおそらく大なり小なりすでにされていることは多いかと思われます。しかし、例えば、ホワイトボードに、日課や週間予定など丁寧に書き入れても、早晩ほとんど「見ない」ということになったり、チェックボックスにチェックを一気に入れて終わりということになって、なんの意味もなくなっていることがしばしばです。そうならないためには、常に、目の前に持ち出して、参照できるようなものにする事と(例えば、冷蔵庫の扉に貼るとか、トイレの扉に貼るとか)、「時間的な見通し」に、「お楽しみ」の要素が「先」で用意されていることが必要です。ポイント制などの、トークンエコノミーは、小学中学年くらいまでは有効ですが、中学以降はあまり効果がないようです。「週末にキャンプに行くから、それを励みに、コツコツ毎日課題をしましょう」「今日、勉強が終わったら、一緒に人生ゲームをしよう」などなど。また、あまり細かい、予定を立てると、ASDの子供は、それがプレッシャーなって、「全部達成しないといけない」と感じて、逆に、苦痛を感じて、最初から挫折することもあります。しかし、全く予定がないということは論外なので、「緩やかで、50%の力でほぼ達成できるくらいの予定や計画」にしておくことが肝要です。