親からの分離はもう一度親にくっつかないと先に進みません。発達特性があると、この辺りで登校しぶりが始ったり、不登校傾向になることがしばしばあります。せっかく自分の部屋を作ってもらい、5年生から一人自室で寝始めたのに、また母親にベタベタ甘えてくる。母親の布団に入ってきたりします。こういう時には、「もういいお兄ちゃんなのにやめなさい」と突き放さないことです。だいたい、布団に入ってきたと思ったら、またすぐに出ていきます。「来るものは拒まず。去るものは追わず」という姿勢が最も良いでしょう。
というのも、この頃になると、学校では背伸びして年齢相応の部分を表に出します。他方で、家に帰るととても幼い部分が前景化し、子どもの中で、「大人的な部分」と「幼児の部分」のギャップに驚くことが珍しくなく、発達特性がある場合は、それが、より顕著になります。そして、数時間のうちでもコロコロと、着せ替え人形のように、「大人的」になったり、「幼児」に戻ったり、めまぐるしく変わります。基本的には、定型発達の子どもであってもこれが、中学を卒業するくらいまで続きます。この両方に対応することがとても大切です。母親の布団の中に潜り込んでくるのも、幼児の部分ですが、もう一度幼児の部分で母親にくっつかないと、母親から離れて大人的な部分を使うことができないのです。こんなふうに、前思春期以降の子どもたちの時間は、幼児的な無時間の世界と大人的な「黒」の時間を行きつ戻りつし、彼らの時間はスパイラルにあるいはトルネードのように、回転しながら先に進んでいくものです。