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発達障害ワンポイントアドバイス(10)「時間とお金」

 ADHDの子どもでも、ASDの子どもでも、「時間とお金」の使い方に困難を示すことはよく知られています。「時間」も「お金」も限りのあるものであり、限られた中で、バランスよく色々な活動をある時間の中に落とし込み、あるいは、限りあるお金の範囲内でやりくりするということが思春期中期(高校生)までにできないと、一生、それらがルーズになる傾向があるように思います。そして、それらは、両方とも人間関係に密接に結びつくものであるので、対人関係も安定しなくなります。したがって、発達障害の子どもに「時間とお金」を上手に使える支援は極めて重要なことです。ADHDの子どもは極端にいうと「今人間」なので後先を考えない。今が良ければ、それで良い。ASDの子どもは、これも極端にいうと、決めた時間、決められた時間通りに行かないとパニックになる。「時間」が「見通し」として行動をガイドしてくれるようなものとしては体験されず、… 続きを読む »

思春期のつまずき ①つまずきの積極的な意味 ②思春期以前の課題への立ち返り 

 思春期のつまずきは、多くは、思春期前期に生じます。中学2年頃から、学校での体験でなにかに修復できないくらい傷ついて、不登校になることが多いように思います。そうすると思春期前期の発達課題がクリアされることが、不登校の解決につながるということです。そして、上記した、思春期中期以降は、ある意味では、その後、本人1人で取り組んでいいくことが基本的にはより可能になります。思春期前期に発達課題でつまずいているということは、それまでの発達課題がクリアされていないということを意味します。しかし、ここで大事なことは、こういうことを言うと、多くの母親が「私の子育てが失敗だった。は母親として失格だ」と自責的になられます。私がお母さん方をみてきて、多くのお母さん方は、ほぼ、母親としては合格点以上なのです。子どもの側の素因による育てにくさ、環境要因による負荷などがあり、親としては合格点以上でも、思春期で子どもがつ… 続きを読む »

一般的な思春期の発達過程 ③思春期中期 ④思春期後期の発達課題

③思春期中期の発達課題 「私は誰」の答えを、自分の心に求めていこうとする時期。異性との交流が始まり、また、進路を巡る葛藤や、家から物理的に離れることをめぐる葛藤、つまり「私はどこへいこうとしているのか」という問いへ現実的に答えていく課題に直面します。  高校生になると、中学生の自分の、外見や身体的なところで体験されがちな「私」の個性が、もっと精神的な「私」の個性として体験されるようになります。いわば、それまで、行動や身体を通じて表現してきたものを、言葉で、「私」を表現できるようになります。 それとともに、異性との付き合いも始まり、「性」が単に身体的なものから、「人」との情緒的なつながりであることを経験し始めます。それはまた、男の子が、男性性を取り入れ、女の子が女性性を取り入れることができてはじめて、異性を受け入れる準備ができるのです。そして、また、大学進学を目前にして、進路をめぐって、また… 続きを読む »

一般的な思春期の発達過程 ①前思春期 ②思春期前期

①前思春期の発達課題  10才から12才、つまり、小学校の5年6年あたりの時期を前思春期と言います。この時期は、心はまだ親の掌にあり、しかし、体は親から離れた存在に急速になり始めます。   前思春期は、いまだ、第二次性徴(声変わりとか、陰毛が生えるとか)が始まらないけれど、嵐の前の予感というところです。大人びた、批判的な言動をしたり、言葉が汚くなったり、いわゆる「自我」が少しずつ目覚めてきます。また、身長や体重が急速に増加し、ひょろ長くなり、心と体の成長のアンバランスが始まります。しかし、まだ、子どもは親の「掌の中」にあり、基本的には子どもは親の制御下にあります。一方で、親離れ、自立、社会化といった方向に進んでいく準備が必要であり、他方、まだまだ、親子の物理的な絆を保持しなければなりません。前者は、親や教師のセイフティネット下での、より自分に似た気のあう友達で構成される仲間集団との交流(共… 続きを読む »

一般的な思春期の発達過程

 思春期の発達過程は、自らへの二つの問いにより、始まります。「私は誰?」「私はどこへいこうとしているのか?」。その問いに、通常でも、10年近い歳月をかけてある程度の答えを探していく旅なのです。親や周囲の大人の期待に過剰に応えることをやめることから、その問いは始まります。親の期待を脱ぎ捨てて、自分が自分に現実的な期待をすることに着替えていくプロセスといってもいいでしょう。親はそのプロセスで、しばしば、子どもに、失望し、困惑し、消耗し、腹が立ちます。あるいは取っ組み合いになります。それは、子どもが自らの問いに答えて行こうとするときの、つまり、なにか新しい命が生まれようとするときの、陣痛のようなものともいえるでしょう。それは、非常に大切で意味のあるプロセスなのです。  思春期の発達課題は、大づかみにいうと、「私は誰?」「私はどこへ行こうとしているのか?」という問いに、自ら、体を張って、試行錯誤し… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(1)発達障害の癇癪(かんしゃく)について

 思い通りにならないと、あるいは、思い通りの対応をしてもらえないと、「泣きわめく」、「黙り込んで貝になる」、場合によっては、「壁や床に頭を打ち付ける」などの、とても「激しい」、あるいは、とても「硬い」反応が生じ、しばしば、それが長時間に及ぶことがあります。自閉スペクトラム症でよく見られる現象です。  そこでは一体本人はどういう経験をしているのでしょうか。「対処」や「対応」を考える前に(対処や対応は、しばしば、非個性的、一般的な関わりになりがちです)、「本人は一体どういう固有の経験をして、どういうことを私に伝えようとしているのか」と、彼らの内的経験に関心を向けることがとても重要です。そして、「癇癪を介して彼らと私との間で一体何が起きているのであろうか」ということも重要な視点です。  彼らは、とても「過敏」です。「過敏」ということは、感覚的にも過敏であるし、対人関係においても過敏です。彼らは、… 続きを読む »