発達障害 ワンポイントアドバイス(6)子どもの心身症 その2

2)子どもの心身症への対応  関係性の障害としての子どもの心身症という視点で、どのように子どもに関わっていけば良いでしょう。上記の「養育システム」の中に含まれる多様な関係性すべてに目配りをする必要があるので、例えば、家族システム以外に、学校や近隣、親戚の領域で関係性の調整を取り組む必要があることがしばしばあります。例えば、いじめや、友達関係のトラブルなどの時です。しかしその場合でも、親との関係性の中にも反映されてくることがほとんどなので、どのようなケースでも、親子の関係性をどう理解し、どう、関わって行くのかということは常に重要です。   親子の関係性ということを分かりやすく言えば、心を容器例えばコップに例えると、子どもの心のコップは、小さいし、発達特性があればより小さくなるので、不安や恐れ怒りなどの感情は、すぐにコップから溢れてしまいます。溢れたものは、ほっておけば、体の症状つまり心身症に… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(6)子どもの心身症 その1

1)心身症について  「心身症」は、特定の病気を指すのではなく、心理的社会的要因が病気の発症に大きく影響する病気の総称です。そして基本的には「身体」の病気です。例えば、大人でいえば、胃潰瘍、過敏性大腸症候群、潰瘍性大腸炎、気管支喘息、本態性高血圧などです。心理社会的ストレスが、生物学的には脳に作用して身体の機能、自律神経系や免疫系などに影響をおよぼすことによって心身症を形成すると言われています。  一方、精神疾患である「身体表現性障害(ヒステリー、精神神経症)」、そのうち特に「身体化障害」は体の症状が中心ですが、その原因となる体の異常はなく、あっても軽微であり、本質は「心」の病です。また、うつ病などでも、体に異常がないのに体の症状(身体化)が現れることがしばしばあります。過去においては、そうした精神疾患も、心身症の中に入っていたので、現在でも「心身症」という概念は実際にはまだ混乱しています… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(5)ASD(自閉スペクトラム症)と自己評価の極端な低さ

 ASDの子どもが、極端に低い自己評価、自己肯定感を抱いていることはよくあることです。客観的に見て、その子の能力と普段のパフォーマンスと比べて、そうした子どもが、信じられないくらいの低い主観的な自己評価を有していることを知って周囲は驚いたり、戸惑ったりします。その場合、「過敏さ」と「知的な高さ」を併せ持っている場合に顕著に見られるようです。そうした子どもの心では一体何が起きているのでしょうか。まず、そうした子どもは、「ああじゃないといけない」「こうじゃないとあり得ない」という、厳しい要求の縛りがあるようです。周囲にも、彼らが、そうした過大な要求をすることも多いのですが、彼らの経験としては、周囲から過大な要求を常に押し付けられているという風に感じています。実際には、彼の心の中で、暴君的に支配する部分があり、健康だけれど幼い彼自身の別の部分を牛耳っているのです。ASDの治療や支援は、発達特性ゆ… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(4)心の二階建てモデル

 心の構造を「二階建て」だとすると、二階部分は、小学入学以降、そしてとりわけ、中学入学以降、何かと課題達成が多くなるというところです。それは勉強にしても、運動にしても、習い事にしても然りです。こうした二階部分で、結果が思わしくないと、自信が低下して、自己評価がガタ落ちし、不登校傾向を呈することも多いのです。逆に、不登校傾向の子どもを見ていると、この二階部分が、心の中で拡大しすぎて、「とてつもない課題を押し付けられている」かのように経験されていることが多いのです。実際には、彼らの心の中に「こうでなければならない。ああでなければならない。そうなれない自分はクズだ」というつよい確信があるからです。過敏な子は、周囲が驚くほど自己評価が低いことがよくあります。すると、親は自信をつけさせるために、二階部分を支援することが多い(特に父親は)のですが、多くの場合悪循環となります。全く「二階」をやらないとい… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(3)ADHD特有の「面倒臭がり」について

 ADHD(注意欠如多動症)の子どもは、興味のあることに過剰な注意の集中をしますが、興味の持てないことには、極端にやる気を示せないことがしばしばあります。常に興奮する刺激を求めており、刺激が外からなくなって、何もすることがない時の「退屈感」は、死んだほうがマシというくらい大きく、そういう事態を必死になって回避しようとします。それに一旦、テンションが上がると、なかなかそこから降りてきません。気持の切り替えが困難になります。この辺りは、すべて、子どもと親がぶつかり悪循環が始まる要因です。  別の視点から、「面倒臭がり」を考えると、彼らは「今人間」であり、「先の見通し」や「多様な選択肢」が見えにくいのです。すると、彼らの経験としては、今日やらなくてはいけない事と、3日以内にやればいい事と、1週間以内にやればいい事と、1ヶ月以内にやればいいことが、時間的な奥行きの中に置かれず、スクリーンに投射され… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(2)両親間の対応のズレと噛み合わなさの増強現象

 癇癪をよく起こす子供や、こだわりの強い子に対して、両親の間で考え方や、対応が、大きく割れることがしばしばあります。多くの場合、母親は「寄り添い派」となり、父親は「体育会系のコーチ」みたいになります。これは、思春期一般の発達のプロセスにおいても、両親の間にしばしば生じる現象です。自閉スペクトラムやADHDなどの発達特性や、愛着の不安定さなどがあると、両親の間の「ずれ」「衝突」は、より顕著化します。まず、思春期一般の場合について考えてみましょう。  思春期心性とは、子どもの心の中に、大人に向かおうとする、あるいは大人の方向に押し出されようとする、つまり「自立」に向かう力と、他方、いつまでも親に保護される幼児のままでいたいとする「依存」に向かう力が、ぶつかり合い、折り合いをつけることができないという状態であり、周囲を巻き込みながら右往左往するのです。自分で折り合いのつかない葛藤は、やがて彼らの… 続きを読む »

発達障害 ワンポイントアドバイス(1)発達障害の癇癪(かんしゃく)について

 思い通りにならないと、あるいは、思い通りの対応をしてもらえないと、「泣きわめく」、「黙り込んで貝になる」、場合によっては、「壁や床に頭を打ち付ける」などの、とても「激しい」、あるいは、とても「硬い」反応が生じ、しばしば、それが長時間に及ぶことがあります。自閉スペクトラム症でよく見られる現象です。  そこでは一体本人はどういう経験をしているのでしょうか。「対処」や「対応」を考える前に(対処や対応は、しばしば、非個性的、一般的な関わりになりがちです)、「本人は一体どういう固有の経験をして、どういうことを私に伝えようとしているのか」と、彼らの内的経験に関心を向けることがとても重要です。そして、「癇癪を介して彼らと私との間で一体何が起きているのであろうか」ということも重要な視点です。  彼らは、とても「過敏」です。「過敏」ということは、感覚的にも過敏であるし、対人関係においても過敏です。彼らは、… 続きを読む »